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2017/03
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アクション04~ニシヘヒガシヘ~
遅くなりましたアクション04。
兎に角えらいことになってます。
自分でも驚くくらいに。
多分メインストリームからは全力で離れた展開ですから
そちらで活躍されている方には何の参考にもならない
話の展開かと思いますがw
楽しんでいただければと思います。
Episode1 天使轟臨 ~Angels Flying in the Supercell~

〔ストーリー〕

この宇宙(そら)に、いったいいくつの星々が生まれ、散っていったのだろう?

この惑星(ほし)に、いったいいくつの生命が生まれ、そして地に空に還っていったのだろう?

それを知るすべは、誰にもありはしない。

西暦20X1年、秋……

天と地の理(ことわり)と同じく、人の作り出した存在にも、いずれ終わりは訪れる。

プロレス団体も、その摂理から逃れることは出来ない。

されどその終わりは、あるいは始まりに過ぎないのかも知れないのだ……

◇◆◇ 1 ◇◆◇


【東京女子プロレス】にとって目下最大のテーマは、GPWWAジュニアタッグリーグ戦――正式名“Top of the Cruiser Girls”――TCGに他ならない。
GPWWA(国際女子プロレス連合)は、東京女子が音頭をとって立ち上げた女子プロレス統一コミッションであり、その会長がすなわち東京女子の社長でもある。
しかし東京女子=GPWWAかといえば、そうでもない。
GPWWAの事務局長をつとめる《井上 霧子》のデスクは東京女子のオフィスにあるが、彼女は東京女子の所属ではないのだ。

「俺は今後、一切手ぇ出さない。よろしくやってくれや」

とは社長が霧子に告げた言葉らしいが、だとしても、東京女子がGPWWAの中核であることには違いない。
なにしろ、TCGは東京女子の興行の中で開催されるのだ。
TCGに出場予定の《ソニックキャット》《ディアナ・ライアル》《小早川 志保》〈高橋 加奈子〉〈南奈 瑠依〉《星野 ちよる》らにとって、他所にトップを獲られるわけにはいかない。
ひときわ、稽古に熱が入るのも無理からぬところであろう。

いずれ体制が整えば、GPWWAが全てを仕切ることも可能ではあろうが、現状では、東京女子主導の形になるのは是非もなし。
収益の分配などは難しい問題だが、そのあたりは、霧子がうまくやってくれるであろう――
とは、いささか虫のいい話かも知れなかった。

一方で。
TCGに関与しないレスラーもいる。
彼女たちはそれぞれ、別のテーマを追求する必要があった。

たとえば《ミシェール滝》は、久々に《ロイヤル北条》とタッグを結成。
《メイデン桜崎》は、奉納プロレスなどのイベントに忙しい。
《RIKKA》は……相変わらず、神出鬼没である。
そして《草薙 みこと》と〈吉野 三輪子〉は、修行に精を出していた。




▼日本 東京都新宿区 BAR『Dead End』


「相変わらず、そちらの団体は賑やかで良いわね」
「賑やかだけが取りえな気もしますけれど……」

グラスを空けながらボヤいたのは、東京女子の《メイデン桜崎》である。

「どうせなら、東京女子に入団すれば良かったかしらね」
「うちにそんな余裕ございませんわ」
「フフッ。どうだか。潤っているのではなくて? 例の、アンチ新女連合の絡みで」
「……もっとソフトな言い方ないんですか」

本当のことでしょうに――と《フレイア鏡》は微笑をうかべた。
フリーの大物レスラーとして知られた彼女だが、現在は【WARS】に入団、《石川 涼美》を蹴落とし、№2の地位にある。

「人聞きが悪いわね。石川さんには、何の含みもないわ」

そりゃ、貴方のほうはないかも知れませんがね、と桜崎は内心でつぶやく。

――WARSは、火薬庫みたいになってるらしいですよぉー。

とは、WARSとはゆかりの深い〈南奈 瑠依〉が逐一報告してくるところである。

「WARSのお客は、仲良しこよしのお遊戯を観たいわけではないでしょう?
 お笑いやキャラクターショーは、ワールドさんや東京女子さんにお任せしておきますわ」
「どさくさまぎれにウチまでdisらないで頂けます?」
「フフフ……冗談に決まっているでしょう」

良く言う、と桜崎は内心で舌を出した。

「それにしても、どうして入団なんて? そんな柄ではないでしょうに」
「クスッ。女も三十路となるとね、身を固めたくなるものよ」
「そんなものですかねぇ……」

にわかには信じがたいが、あるいは、それが本音なのかも知れない。

「あぁ、心配しないで。例の奉納プロレスには、出向かせて貰うから」
「……ギャラの方は?」
「そちらはWARSの金庫番と要相談――と言いたい所だけど、前の借りがあるから、これくらいで結構よ」
「それでも結構な額ですけどね」

以前、東京女子が野外フェスで興行を打った時、フリーの鏡をブッキングしていたのだが、サンダー龍子との激闘で負傷、欠場となった。
この件が遠因となって、〈どっさり!いくらガール高橋〉でおなじみ〈高橋 加奈子〉が奇怪なデビュー戦をおこなうこととなったのは記憶に新しい。
その借りを返すという形で、ちかぢか桜崎が中心になって開催される『神田明神奉納プロレス』に鏡が出場することになったのだ。
フリー時代と異なり、WARS所属の現在はいささかややこしい立場だが、GPWWA加盟団体同士、そこは何とか融通が利く模様。

「楽しみにしているのよ。ずいぶん、ユニークな子たちが入ったようだし」
「ユニークっちゃあ、ユニークではありますけれど」

高橋南奈吉野星野――略して4バカは、桜崎の頭を悩ませる最も大きな要素の一つである。
彼女たちと、鏡が、絡んだならば……

(……なおさら、カオスなことになりそうね)

「そうそう。うちの相方も顔を出したいとか言っていたけれど?」
「勘弁してください」

このうえ、麗しのサンダーガールにまでお出まし願っては、手がつけられそうにない。
しかし、スーパースターというものは、人の都合など考慮せぬから、スーパースターなのだ。
それを知る桜崎は、すでにして嫌な予感を味わっていた……


◇◆◇ 2 ◇◆◇


▼日本 東京都渋谷区 スーパー『ファーイーストア』


「いらっしゃいませ、ただいま牛肉がお安くなっております、いかがでしょうか――」

〈吉野 三輪子〉は、東京女子プロレスのグループ会社が経営するスーパー『ファーイーストア』で働いている。

といっても、レスラーをクビになったわけでは、もちろんない。
以前は中卒でプロレス界に入ってきて、バイト歴もない者が少なくなかったため、リタイヤ後は苦労することが多かった。
そのため、社会勉強の一環として、こうしてスーパーで働くことを義務付けられているのだ。
とはいえ、それはあくまで練習生の間であって、本来、デビューした三輪子は関係ないはずなのだが。

「お嬢様がたは、まだまだ自分たちの給料も稼げぬ半人前ですので――」

とのメイデン桜崎のお達しで、たまにこうして手伝いに借り出されるというわけ。

(……でも、こういうのも嫌じゃない)

プロレスとは真逆の仕事だが、どこまでいっても“闘い”に生きる女……とはいかない彼女にとっては、肌が合うのかも知れぬ。

休憩時間。
ふとケータイを見ると、メールが届いていた。

「あ……」

メールの主は《グローリー笠原》。
彼女がプロレス界に入るに当たって、もっとも影響を受けた一人である。

「なになに……『この間の件だけど、ごめんね、ちょっと無理みたい』……?」

“この間の件”とは一体何のことであろうか。
この文面だと、何やら三輪子が彼女に頼んだかのようだが……

「……! ひょっとして、《スイレンさま》……っ!!」

“――いやいや、これはつまり、アレよ”
“――そう、不可抗力というやつでな”

「~~~~っ」

ハタから見れば、三輪子はまるで独り言を言ってるようにしか見えぬであろう。
が、そうではない。
彼女の中には今、神的な何か――その名を《スイレンさま》と言うらしい――が宿っていて、時おり、三輪子の知らぬうちに(たとえば、彼女が寝ている最中など)体を使って行動したりするのだ。
どうしてまた、そんな次第になったかは――
長くなるので、置いておくとして。

“ゆるせ、ゆるすがよい。ちゃんと話すつもりだったのだぞ”
“ただ、いかんせん我らは、ここのところ、プロレスに夢中でな。それどころではなかったのじゃ”

「……はぁ……」

以前は、無意識状態――要は夢の中でしか、彼女(たち?)と交信することは出来なかった。
が、最近はこうして、目覚めている時でもコミュニケーションが可能になってきている。
これはスイレンさまに言わせれば、

――素質があったのであろうよ。

と、いうことになる。
彼女? は現代の文化には疎く――三輪子の意識を通じて、知識としてはわりとあるのだが――ここ最近は、古今のプロレスのDVDを見漁っている。
と言っても、実際には三輪子が観ている状態なわけだが。

“知っていることと、分かっておることは違うからの”
“我らはそなたの知識は共有出来るが、気持ちは共有出来ぬ。つまりはそういうことよ”

いまいち良く分からないが、まぁ、そういうことらしい。
改めてプロレスビデオを観直すことは、三輪子にとっても勉強になることだったので、それはそれでいいのだけれど。

「それで? いったい笠原さんに何を頼んだんです?」

最初の頃はそれなりに丁寧に接していた三輪子だが、最近はだいぶ砕けた態度になっている。

“なに、〈高橋カナ男〉の奴がな”
“いや、今は〈クイーン・コポタ〉であったか?”

「……要するに、加奈子さんですね」

同期の“汁レスラー”〈高橋 加奈子〉はしょっちゅうリングネームを変える(変えられる)ので、もはや本人すら今のリングネームを把握していない、ともっぱらの噂である。

“さよう、あやつが、プロレスリング・ネオとつなぎをつけたい、と言うのでな”
“そういえば、笠原は何度か上がったことがある、と聞いていたゆえ、事を図ってもらったのじゃが、無駄骨だったとみえる”

「はぁ……もう、そんな大事なこと、勝手に決めないで下さいよ」

ため息をつく三輪子。
いくら、悪気はないとはいえ。

「いったい、どんなメール送ったんですか……
 …………
 ええっ!?」

――三輪子だぴょん♪ あすか(笠原の本名)たん、三輪子のお願い聞いてほしいのっ、よっし~の~♪

「な、なんですかこれっ!?」
“うむ、今風のメェルと言うのはそんな按配なのであろう? るいの奴から来たメェルは、そんな具合であったぞ”
“ちゃんと『ほしいの』と『よしの』で韻も踏んでおいた。風情があろう?”
「………………」

これまた同期の〈南奈 瑠依〉とでは、キャラクターが違い過ぎると思うの。

“ゆるせゆるせ。そなた、何かと忙しい体であろ?”
“我らも、少しでも負担を減らしてやりたい一心であったのだ。大目に見るがよかろう”

「はぁ……それは、いいのですけど」

確かに、忙しい。
試合がない日は、これまでの全体練習に加えて、《草薙 みこと》との個別練習がある。
しかもそれが、練習というよりは修行と言った方が正しいくらいの、ハードな代物ときている。

“無理もなかろう。なにせ当代の“みこと”の行(修行)は、これまでの我らより数段過酷ゆえな”
“それもこれも、プロレスというものに触れたからであろうよ”

もとより、三輪子はみこととの修行を嫌がっているわけではない。
ただ耐えるだけでなく、目的のある苦難は、決して嫌なものではなかった。

(あの時……)

――――力を、貸して貰えますか、三輪子さん。

三輪子の手を取って、訴えてきたみこと。
その瞳の奥には、燃えるような熱情と同時に……
風にそよぐ一輪の花のような、はかなさが宿っていた。

――――私に、出来ることでしたら。

そう答えて、手を握り返した時から……
吉野三輪子は、新しい自分を見出していたのかも知れない。

とはいえ、さしあたってはこともなく。
プロレス修行の明け暮れで、日が過ぎていったのである。



そんなある日、東京女子はいっぷう変わった興行を打った。


▼日本 東京都千代田区外神田 神田明神


神田明神――正式名称は神田神社。
神田祭で知られる著名な神社であるが、秋葉原に近いという土地柄、そちら系の話題も少なくない。
このたび行われるイベントは、さて、その範疇に入るものかどうか。

『神田明神おとめ祭り~奉納女子プロレス~』

神社の境内に設置された特設リングで、奉納プロレスをおこなうというこのイベント。
【東京女子プロレス】の《メイデン桜崎》が中心になって準備を進めてきた大会である。
東女勢はもとより、他団体やフリー選手も参戦、なかなか興味深いカードが組まれている。

さて、そのバックステージ。

「今日は、のんびり観させて貰うとするよ」
「はは……っ、どうぞ、お手柔らかに」

桜崎が笑顔を引きつらせながら相対しているのは、

(《サンダー龍子》……!!)

日本屈指の武闘派団体【WARS】のトップであり、国内最強レスラーの一角とうたわれる剛の者。
先日まで負傷欠場していたが、次期シリーズから復帰するという。
穏やかな笑みを浮かべており、決して威圧的ではないのだが、うかつに近寄りがたいオーラがある……

「あ、龍子さんだ~~。お久しぶりで~~す(>▽<)」
「…………」

そんな空気もなんのその、あっさり声をかけたのは瑠依。
そういえば、彼女は先日までWARSに参戦していたのだっけ。

「あぁ、渡辺の親戚の……」
「はいっ、南奈です! 南奈るいをよろしくお願いしま~す♪」

ああいう真似は自分には出来ないな……とつくづく思う三輪子である。

「挨拶に、参りましょうか」

みことが、気を回してくれた。

「あ、はい、すみませ……」

と、彼女に従おうとした矢先。

「――貴方が、吉野さんかしら」
「え、あ……っ」

ふいに、銀髪の女性に声をかけられた。
同性ながらに、ドキリとさせられるほど、妖しい美貌の持ち主である。

(《フレイア鏡》!)

先日WARSに入団した、リング上のスーパーモデルとも称される稀代の美女レスラーである。

「は、はいっ、吉野三輪子ですっ。よろしく、お願いしますっ」
「こちらこそ。……武神さん、貴方も挨拶なさってはどうかしら?」
「…………」

背後に控えていた長身の女性が歩み出てくる。
心なしか龍子に似た雰囲気だが、より猛々しいムードなのは、若さゆえであろうか。

「……〈武神 玲蘭〉(たけがみ あきら) です。よろしくお願いします」
「あっ、は、はい、どうも……っ」
「武神さんは龍子さんの遠縁なの。ちょっと雰囲気が似ているでしょう?」
「え……えぇ」

すると、みことが歩み出て、

「肥州の、武神流兵法の方とお見受けしますが――」
「……っ、はい。そちらは?」
「草薙みことと申します。羽州の草薙流を収めております」
「これは――」

みことと武神、いやに古風な一礼を交わす。

“――ほほう。奇遇な――”
“――肥後の国に、まだかような者が残っておったか”

「あ……っ、で、では、私、手伝いがありますので――」

突然聞こえた《スイレンさま》の声に戸惑いつつ、その場を取り繕った三輪子。

(っ、何の話です?)

“なに、巫女斗ノ祖タル七氏――という、武術の一族がおってな”
“アレはつまり、草薙の家とは、ある意味、宿敵ということになるか”

「…………っ」

それはつまり……
以前、スイレンさまが言っていた、<<渡巫女斗ノ儀(ワタリミコトノギ)>>とやらと、関係あるのだろうか。

“さよう、巫女斗ノ儀に関わる一族じゃ。よく憶えておったな”
“さればとて、こたびの巫女斗ノ儀に、全ての氏族が関わるとは限らぬが”

(……結局、巫女斗ノ儀というのは、何なのですか?)

と何度か追求している三輪子なのだが、

“少なくとも、闘って闘って闘い抜いて――”
“最後に残った者が、有難いものを手に入れる――というような、ものではないな”

(………………)

かくのごとく、はぐらかされるのが常なのであった。

武神玲蘭――ティーゲル武神。
あるいはいずれ、再びまみえることもあるのかも知れない……



さて、そんなつかみどころのない話はさておき。
この興行では、三輪子はタイトルマッチに初挑戦した。
もちろん、一般的なそれではない。


<アイアンメイデン王座・初代王者決定4WAY戦 30分一本勝負>

 〈高橋カナタロー〉 VS 〈南奈 るい〉 VS 〈吉野 三輪子〉 VS 《星野 ちよる》


“Shooting Star”(KOTOKO)に乗って登場の三輪子には、「先生ーー!」「最優先事項--!!」と声がかかるのは、さすがに場所柄というべきであろうか。

東京女子のルーキー4人による4WAY戦(誰かが3カウントかギブアップ奪った時点で終了)。
しかし、主役は彼女たちではない。

『あーっと、今、『アイアンメイデン王座』のベルトが入場して参りました!
 本日新設されたばかりの、チャンピオンベルトの擬人化! 萌えるアイコン! 《メイデンさん》の登場でありまーす!!』

さよう、一見するとゴテゴテした、トゲトゲのついたアーマーを装着したメイデン桜崎にしか見えないが、メイデンさんである。

――最近、何でも擬人化するのがブームなんだろ? だったら、ベルトもそうしたらいいんじゃね?

そんな東京女子の社長の思い付きが具現化したのが、このメイデンさん(制作費6000円)である。
少なくとも、普通のベルトを作るよりは、ずっと安く付いたのは間違いない。

「あのー、このベルト獲ると、何かいいことあるんですかね……?」

高橋カナタロー(縁起の良さそうなマスクをかぶり、肉襦袢を装着)が、おずおずとメイデンさんに尋ねる。

「あァ? そんなもん、別にねーよ」
「キャラ違う!?」

まさかのプロトタイプメイデンさんであった。

「タイトルマッチはアタシがやりたい時にやる。24時間、いつでも気が向いた時にやるから、油断するんじゃねェぞ」
「えぇぇっ!? それ、完全に罰ゲームですよね!? そんなタイトル、全然欲しくないですよぉ!」
「……わ、私……は、欲しい、か、も……」
「はいはーい! 私も欲しい~~!! なんやかんやで、ベルトはベルトだし~っ」
「そ、そうですね、私も……欲しい、です」
「……………………」

「……わ、わたし、も……欲しい、カナ……」
『――どうぞどうぞ』
「お前らぁぁぁぁぁぁ!!」

そんな前フリはさておき……
試合の方は、ちよるが瑠依を仕留めて決着。

 ×南奈 vs 星野○(12分31秒:逆水平ちよるっぷ)

ベルトを巻く……というより、のしかかられて、「ひうう……」と苦しむ星野の姿は、いたってシュールなものであった……



この日のような、変わった興行はさておき。
通常の試合では、もっぱら瑠依と組む機会が多かった。
会社的な意向としては、明るい瑠依と物静かなタイプの三輪子、という取り合わせの妙もあったろう。
また、加奈子は主に星野とコンビを組んでいることも大きかった。
ゆえに、オープニングマッチは新人同士のタッグマッチ、というパターンが少なくないというわけ。


▼日本 東京都新宿区 新宿FATE


<第1試合 15分一本勝負>

  〈カナ高橋15世〉 & 《チョルル星野》
  VS
  〈吉野 三輪子〉 VS 〈南奈 るい〉


ちなみに、三輪子の女教師ギミックはまだまだ絶賛継続中であり、

「高橋さん! 試合中に“スポーツドリンク”を呑んじゃだめです! 真面目に闘ってください!!」
「星野さん!! 受けてばかりじゃなくて、自分から勝とうとしないと、いつまで経っても一人立ち出来ませんよ!」
「南奈さんもっ、セクハラはほどほどにし……あんっ!?」

観客の反応は正直ビミョーではあったが、何事も、定着するには時間がかかるものである。

「バーカ、プロレスには学校も教科書もないんだよ!」

プロレス学校出身のくせに、そんな風に反抗する加奈子。

「くっ……先生、諦めませんからね! いつかきっと、みんなで砂浜をダッシュしましょう!」
「せんせ~、いまいちイメージつかめないです~」
「…………」

唯一の生徒? である瑠依とも、ジェネレーションギャップ? を感じてしまう三輪子であった。



ところで。
東京女子プロレスは、TCG――“Top of the Cruiser Girls”、クルーザー級(軽・中量級)の選手によるタッグリーグ戦の開催を予定していた。
当然、ホスト団体となる東京女子からも選手が多数出場予定となっている。

「私ですか? いえ。出場はしません」

草薙みことは、その気はないらしかった。

「そうなんですか? ジュニアならともかく……」

中量級もアリなら、みことも三輪子もギリギリセーフではあったろう。

「この期間――しばし、旅に出たいと思っているのです」
「旅……ですか」

もちろん彼女が言うからには、物見遊山の観光ではあるまい。

「……っ、私も、ご一緒して、いいでしょうかっ?」
「…………」

じっと見つめてくる、みこと。

「難儀な旅になりますが……お覚悟は?」
「…………っ、だ、大丈夫、ですっ」

三輪子の腹は決まった。
瑠依からはTCGのパートナーに誘われていたが、これは固辞、草薙の修行に付き合うことにしたのである。

“――いやはや”
“――無事、還って来れるといいがの”

「………………」

何も、今のうちから脅かしてくれなくてもよさそうなものだった。



▼日本 石川県羽咋市

まず、彼女たちが向かったのは日本海側。
電気関係にきわめて相性が悪いみこと――電化製品クラスなら、触っただけで壊れてしまう――の体質のため、移動手段は限られる。

(あれは――あの体質は、巫女だから、とか、そういうことなんですか?)

と、三輪子はスイレンさまに問うたことがある。

“いや、アレはただの体質じゃな”
“あの調子では飛行機にも乗れまい。難儀なことよ”

仕方なく、ここは自転車を利用。
東京から北陸まで、3日で到着した。

最初に訪れた石川県の能登半島で、彼女たちは奇妙な体験をしている。
俗に言う『千里浜事件』である。
この件については、三輪子が後にインタビューに答えているので、それを引いておこう。

(以下、引用)

【東京女子プロレス】のプロレスラー、吉野三輪子は語る――

「はい、確かに私は、かの地に参りました。
 おりしも私は、草薙みことさんと修行の旅の最中でした。
 あの時は、みことさんが『この海で身を清めましょう』と言い出したのです。

 流石に私は、いささかたじろぎました。
 なにせ晩秋の日本海です。
 かなり荒れておりましたし、何より冷たさたるや、骨身に染みとおるもの。
 ですが、これも修行――と考えますと、何故か浮き立つような気持ちになったものです。
 かくして私たちは、水着――私はかねて用意の競泳水着でしたが、みことさんは『身を清めるのですから、衣服など無用です』と言い張るのを、必死に説得して、襦袢姿となりました――に着替えまして、凍えるような海で身を清めたのです。
 ううっ……思い出しただけでも、鳥肌が……

 そこまでは、良かったのですけれど、さぁ陸に上がって暖を取ろうと言う段(駄洒落のようですね、すみません)になりますと、見知らぬ二人組が私たちを待ち受けていたのです。
 彼らは異形の覆面を身に着けており、到底人間には見えませんでした。

 『どうやら、妖しいものと行き遭ってしまったようです』

 みことさんは冷静でしたが、私はそれこそ、血の気が引く思いでした。
 その二人――あるいは二体は、じりじりと迫ってきました。

 『見逃してはくれないようですね。三輪子さん、小さい方はお願いします』

 と、彼女は大柄な方と対峙しました。
 こと、ここに至りましては、私も震えてばかりはいられません。
 こういうこともあらんかと思って、みことさんとともに、鍛えてきたのですから。
 小さいほうのソレ――仮に、アヤカシ(海妖怪の総称)とでも申しましょうか――は極めてすばしっこく、かなり難儀させられました。
 それにこちらは、水垢離(水行)のせいで体は冷え切っているのです。
 かろうじて、ダブルリストアームサルトは決めたものの……
 あのまま続けていたら、果たしてどうなっていましたでしょうか。

 突然現れた、あの光……
 あれもまた、アヤカシのたぐいであったのでしょうか……
 あっ、そろそろ、半額シールを貼らないと……すみません、それでは、ごきげんよう」

(東女のスーパー『ファーイーストア』の弁当売り場にて収録)



これだけでは、いささか全体像が掴みづらい。
そこで、同時期にその場にいたという他のレスラーの証言も交えてみるとしよう。

(以下、引用)

【激闘龍】のプロレスラー・〈MARIPOSA〉は語る――

「私は《AGEHA》さんとUMAハントのため、あの地を訪れました。
 ……え、UMAハントとは何ぞや、ですか? それは、まぁ、いいじゃないですか。
 (自分も良く分かってない、なんて言えないし……)

 えっと、なんでもあの海には、かつて全長10メートル以上の“人魚”が現れて、人を襲ったことがあるとか。
 もっとも、私は半信半疑だったんです。
 だって、人魚なんているはずないじゃないですか。
 いや、今までさんざんUMAと遭遇してきておいて言うのもなんですけれど……物証は何も残っていませんし。

 でも、出ましたね。
 何がって、人魚ですよ、人魚!
 10メートルとはいきませんが、代わりに2人組の人魚が、寒そうな日本海から上がってきたんです。
 彼女たちは人間の言葉を話していました。
 何を話していたかって? たしか“ミコト”とか“ミワコ”とかなんとか……
 あるいはそれが、あのUMAたちの個体名なのかも知れません。

 外見ですか? 一人は襦袢って言うんですか、着物みたいなのを着てて。
 もう一人は……アレは……競泳水着みたいな……まぁ、とにかく、何か着ていました。
 足? 普通にありましたよ。
 え、それでどうして人魚だと分かったのか、ですか?
 ………………
 ……えっと、AGEHAさんのUMAアンテナが反応してたんです。ホントですよ。

 その後どうしたかって? もちろん、闘いましたよ。
 AGEHAさんは着物のようなものを着た相手と、私は競泳水着のような姿の相手と。
 私が華麗にデジャヴを決めたりして、一進一退の攻防でしたが、ふいに、別口のUMAが現れて……
 あれは、なんだったんでしょう。
 とりあえず、人魚ではなかったようですが。
 とにかく……そのせいで、AGEHAさんは……
 …………
 もういいでしょうか?
 今の私に出来るのは、目の前の試合に集中することだけです」

(TCG第三戦の直前に収録)



【日本海女子プロレス】のヒールレスラー、〈ルカ湖ノ宮〉は語る――

「千里浜の件ですって? さぁ、何のことかしら。
 まったく、これっぽっちも、からっきし、憶えていないわ。
 もうすぐ試合なの。さぁ、帰った帰った。

 …………。

 ……仕方ないわね。そんなに知りたいのなら、話してあげなくもないわ。MOMOKAさん、ちょっと待っていて頂戴。

 あれは、そう、北条さんに羽咋を視察してくるように言われたのが発端だったわ。
 ちかぢか能登(石川県北部)でも興行を打ちたいから、その下見、ということでね。
 そういうのは、上の人間がやるべきことだと思うけれど、何せ日本海女子は人手が足りないから、仕方ないのよ。
 え? 遥華ちゃんはえらい? や、やだなぁ桃子ちゃん、そんなたいしたことないってばぁ……って、ゴホンゴホン。
 何の話だったかしら? あぁ、そうそう。それで、羽咋市に行ったのよ。
 そうしたら、白石さん――あー、ノエルが、勝手についてきてしまって。まったく、参ったわ。
 ところで羽咋市と言うのは、“UFO”で有名な所なの。詳しくは……各自調査して頂戴。
 それはまぁいいのだけど、気づいたら、ノエルが勝手にフラフラ歩いていってしまって。
 仕方ないから必死に追いかけて――気づいたら、千里浜にまで来てしまったというわけよ。

 そうしたら……なんだか得体の知れない連中が4人ばかり、争っていたわ。
 そこへ、ノエルがスタスタ歩いていってしまって……

 ……その後、どうなったかって? さぁ、よく憶えていないわ。
 と、とにかく、私は忙しいの。さぁ、行きましょう、MOMOKAさん。

 (アレ、宇宙人だったのかなぁ……でも、宇宙人はデジャヴやダブルリストアームサルトは使わないよね……)」

(TCG第三戦の直前に収録)



ともかく、何かがあった――のは、間違いないのであろう。

(一体、何だったんですか、アレは……?)

スイレンさまに尋ねてみても、

“さぁな。我らが知っておるのは、知っておることだけじゃて”
“世の中には、わけのわからぬヤカラがおる、ということよな”

(………………)

神様っぽい相手には、言われたくない台詞であった。
みことによれば例の件は、

「恐らくは――土地神のたぐいが、干渉したのでしょう」

と、いうことになる。
意味はかいもく分からぬが、とにかく、そういうことなのであろう。



もっとも、上記の出来事は、草薙みことと三輪子の旅における、一エピソードに過ぎない。
彼女たちにとって、最大の目的にして最大の危難は――
――西にあった。


◇◆◇ 3 ◇◆◇


▼日本 瀬戸内海某所 多良々(たらら)島 『スタジアム』控え室


(こ、ここって……っ)

吉野三輪子は、これまで真っ当過ぎるほど真っ当な人生を送ってきた。
そんな彼女でも、この地の“危険さ”は、皮膚感覚で知ることが出来た。

多良々(たらら)島。
表向きは、無人島となっているが……その実態は別にある。
富裕客のみを相手にする、VIP専門の裏カジノ。
そこで行われる地下格闘技は、【Paradise Lost】と呼ばれている。
気づけば、二人はその賭け試合に出場する羽目に陥っていた。

思えば……
この地に、みことと三輪子を招いたのは、一人の美貌の少女である。
出会ったのは、蜃気楼揺らめく富山県・魚津の海岸。
どこかみことに似た雰囲気を持つその妖艶な娘は、

――――貴方たちの“運命”は、西にある。

そう、告げた。

「なるほど。……貴方が“司”というわけですね」
「え? えええ……?」

何かが通じ合ったのか、みことはそのまま、ハンドルを西に切ったのである。
三輪子も、従うしかなかった。

そして……気づけば、あれよあれよと、このありさま。
薄暗い地下の一室で、地下格闘技の試合を強要されている。
ここまで、みことに従って付いて来てしまったが……
流石にこれは、止めるべきだったのではないか。

三輪子は、〈眼鏡〉というリングネームを与えられた。
覆面をつけるのに、眼鏡も何もないものだったが……
ちなみに草薙は《巫女》。
いささか、そのまま過ぎるのではないだろうか。

三輪子――眼鏡の相手は、《蜘蛛》と呼ばれていた。

「お前の試合は、“水着剥ぎデスマッチ”だ」
「…………?」

案内人にそう告げられた時、三輪子はにわかに意味が分からなかった。

「あの……それって……?」
「簡単だ。相手の水着を剥がして――」

――生まれたままの姿にした方が、勝利。

「え、えええ……っ!?」

いかに三輪子でも(?)そんな恥辱は、流石にゴメンこうむりたい。

「それとも、時限爆弾デスマッチや真剣デスマッチの方がいいのか?」
「………………」

どうやら、選択の余地はないらしかった……



かくして、眼鏡の貞操をかけた一戦は幕を開けたのである。


▼日本 瀬戸内海某所 多良々(たらら)島 『スタジアム』


<水着剥ぎデスマッチ・時間無制限>

 〈眼鏡〉
 VS
 《蜘蛛》


「クッククク……ッ、嬲りがいがありそうだコト――」
「…………っ」

爬虫類にも似たクネクネとした動きを取りつつ、妖しく舌なめずりする蜘蛛。
一方の眼鏡と来ては、用意された露出度の高いビキニの水着――もとより、脱がしやすくするために他ならない――を恥じらう余裕とてなく、緊張と恐怖におののいている有り様。
果たして一方的に攻め立てられ、水着もズタズタにされた眼鏡であったが……

「……えぇぇいっ!!」
「な……!?」

必死のショルダータックルでよろめかせるや、

「……せぇぇぇぃいっっ!!」
「――――ッッ!?」

華麗なノーザンライトスープレックスが炸裂!!
よもやの大逆転で、貞操を守り切った――
こんな所で初自力勝利とは、複雑と言うしかなかったけれど。

 ○眼鏡 vs 蜘蛛×(20分ほど)

「……っ、ハァ、ハァ……」

 『これはまさかの番狂わせ――では、お楽しみの時間と参りましょう』

「あ……っ、う……」

辛うじて勝ったものの、脱がすなんて……とためらう彼女。
が、ふいに人が変わったように、テキパキと相手を剥いてしまい、きっちりと勝ち名乗りを受けて見せた。
ハタと我にかえり、足早に引き上げる彼女の姿は、勝者でありながら敗者のようであったとか。





▼日本 瀬戸内海某所 多良々(たらら)島 『スタジアム』 通路


(ううっ……ひ、ひどいです……スイレンさま……)

“ゆるせゆるせ。ああでもしなければ、そなた、進退きわまったであろう?”
“野良犬を噛んだと思って、諦めるがよかろう”

(そ、そんなこと……っ)

頭が真っ白になった三輪子の身体を使い、スイレンさまが服を脱がせたという先の一段。
三輪子にとっては、いろんな意味でトラウマになりそうな体験であった。

“しかし、見事であったな。いざとなれば、加勢が必要かと思うたが”
“よもや、ここ一番で、決めてみせるとはな”

(え……っ、そ、そう、なんですか……っ?)

てっきり、スイレンさまが土壇場で助力してくれたのかと、思っていたのに。

“否、否。今のはまごうことなき、そなたの手柄よ”
“みこととの行が、功を奏したとみえる”

「……っ、は、はい……っ」

“いやはや、実に見事であった”
“いっそ今度から、そなたの試合はすべて水着剥ぎにして貰ったらどうかの?”

(………………)

それは、遠慮したかった。

「あ…………」

通路の奥から、覆面姿のレスラー――それを言ったら今は三輪子もそうだが――が歩いてくる。
壁によりかかり、道を開けた。

「…………?」

一瞬、彼女がこちらを見た気がした。
もっとも、こうボロボロでは、見られるのも無理はないが。

“――三輪子よ”
“あやつの試合――見ておくがいいぞ”

「え……?」

“あれも――草薙と同じ”
“巫女斗ノ祖タル七氏の、一つゆえな”

「…………っ」



 『今宵の【Paradise Lost】もいよいよメイン・エベント――』

 『常勝不敗の絶対王者たる《魔王》に挑むのは、新進気鋭の《雷神》!! オッズは魔王が1.15、雷神が5.25となっております――』

殺風景な円形闘技場に、2人の女が立っている。
試合を裁き、止めるべきレフェリーなど存在しない。
もとより、客席には観衆の姿もなかった。
これは『試合』などではなく――もっと、剣呑なもの。
もっとも、《雷神》に臆する色は皆無である。
それはかつて、同じような場に立ったことがあるがゆえ、であろうか。

「さて――始めようか」

これも覆面姿の《魔王》が、ゆっくりと身構えた。
《雷神》もまた、ゆるりと歩を進め始める。

「どうやら……始まったようですね」
「あ……っ」

出入り口で試合を覗いていた三輪子の隣に、みことがやってきた。
彼女は先の試合で、《運命》と称するレスラーと、時限爆弾デスマッチを闘っていた。
試合はみことが草薙流の大技で仕留めたのだったが、ほぼ同時にタイムリミット。
あやうく両者大爆発……となるところだったが、不発に終わり、命拾いしたのだった。

 ○巫女 vs 運命×(15分くらい:草薙流兜落とし)

「爆弾が電気式でなければ、危なかったですね」
「…………」

こんな所でアンチ電気体質が役立つとは、分からないものである。

「っ、あの、みことさん……」
「はい?」

どうして、こんな物騒な試合に、挑まなくてはならなかったのか?

「今それを聞くのは、少し遅い気がしますね」

みことは苦笑しつつ、

「この地で、しなくてはいけないことがありますから」
「っ、それは……?」

みことが、答える前に。

「あ……!」
「…………っ!」

魔王が、猛ラッシュを仕掛けた。
雷神、防戦一方――

「!」

魔王の吐いた毒霧が、雷神の目を潰した。
グラつくところへ、容赦の無い追い討ちが――

「…………!」

一瞬の、早業。
スルリと体をかわした雷神、魔王の背後に回るや、

「――――せいッ!!」
「~~~~~~~~!?」

そのまま、タイガースープレックス――いや、そのまま自らも飛び、さしづめ杭打ち式の背面パイルドライバー!!
脳天を強打した魔王、ピクリとも動かず――

「……っ、な、何ですか、あれ……?」

あんな動きが、人間に、可能なのであろうか。

「……見せて、頂きました」

みことの声も、乾いている。

「………………」

無言で立ち上がる、雷神。

 『おおーっと、これは大番狂わせ! 大アップセット!! 常勝不敗の絶対王者が敗北です――』
 『では、勝者・雷神、とどめをさして頂きましょう――』

「………………」

この勝負は、文字通りの“デスマッチ”。
その決着は――敗者の、死によってのみ下される。

天井から、切れ味の悪そうな刀が振ってくる。
それを手に取った雷神であったが……振り下ろそうとは、しない。

 『どうしました、雷神――さぁ、とどめを』
 『このままでは勝利は無効となり、貴方の命も――』

「わが技は――――」

雷神は、刀を壁に投げつけた。

「――――人を、殺める技ではない」

 『――――――――ッッ』

「み、みことさん……っ」

思わぬ成り行きに、ハラハラすることしか出来ない三輪子。

「はい。どうやら、見るべきものは見たようです」

みことうなずき、

「そろそろ――参りましょう」
「え……っ?」

フゥッ……とみこと、深呼吸するや、

「はっっ!!」

跳躍し、天井のライトに、触れた。
その、瞬間。

「!!」

視界が、暗闇に包まれた。
同時に、四方八方から、悲鳴の混じった怒号が鳴り響く。
どうやら、施設全体が、停電に陥ったらしい。
みことの“からくり殺し”、恐るべし。

「こ、これは……っ」
「行きましょう、三輪子さん。長居は無用です」

みことに手を取られ、三輪子は必死にその後を追った……




▼日本 瀬戸内海某所 多良々(たらら)島 海岸


「……っ、はぁ、はぁ……っ、はぁぁぁ……」

混乱の中、かろうじて海岸まで走り抜けてきた。

「………………」

みことは水際に立ち、何やら思案顔。

「あ、あの、みこと、さん……っ?」
「……どうやら、顕現したようですね」
「!」

視線の先に。
うっすらと立ち上る人影が、次第に、形を成していく。
それはどうやら、覆面姿の女である。

“なにゆえ――邪魔立て、する”

“我らは――ただ――観たい、だけ”

じりじりと迫ってくる、何者か。

(あ、あれは……っ!?)

“ま、我らの同類、のようなものさな”
“もっとも、近くて遠い存在ではあるが”

「――もう十分、巫女斗(ミコト)を堪能したはずです」

重々しく告げる、草薙みこと。

“否――否――否!!”

“もっと――観たい。もっともっと――まだまだまだまだ――”

“激しく――無残で――可憐で――悲壮な――乙女たちの――巫女斗を――観たい――――”

「その、底知れぬ、貪欲――」

「草薙流の名にかけて――認めません!」

草薙みことが――跳んだ。

「…………!」

正に、まばたき一度きり。
みことの両足が、“それ”の頭蓋を、砂浜に打ち付けていた。

“グ…………ァ…………ァァァァ…………”

断末魔の響きを残しながら、視界から失せていく、それ。

「っ! あ……っ」

よろめいたみことに慌てて駆け寄り、助け起こす。

「……っ、ありがとうございます……三輪子さん」
「あ、あの……っ、今の……は?」
「……草薙流奥義、“イデハ”……秘中、の……秘、です」
「…………」

技の名前より、さっきのアレの正体を、知りたかったのだけれど。

「先ほどの者の、影響で……この島では、凄惨な闘いが続けられてきました」

かの者が、望んだがゆえに。

「ですが……今後はもはや、その心配は無用……でしょう」
「……っ、これが、みことさんの……」

使命、のようなものなのか。

「そう……ですね。その、一つでは……あります」

どうやら、まだまだややこしいことになっているようだった。

“さよう、さっきのようなヤカラを退治するのも、<<渡巫女斗ノ儀>>の一環”
“されど、そればかりではない――たとえば”

「!」

視界の先に、見覚えのある姿が浮かんでいる。

「…………」

それは――“雷神”。

「…………」

視線の先には、ボートがあった。

「! あ、あの……っ」
「…………」

無言で、ボートへ向かう雷神。

「み、みことさ……んっ?」
「…………」

見れば、みことは精根尽きたように、眠り込んでいる。

“ま、無理もなかろう。大暴れであったからな”
“さて、三輪子の決断力が試されるの”

「~~~~っ!? そ、そんなっ」

決断も何も……この場では、もう……

「わ、わっ!」

「私たちも……っ! お願いしますぅ……っ!!」

みことを抱え上げて、必死に後を追うほかはなかったであろう。



後日――


▼日本 東京都新宿区 BAR『Dead End』


「ほお。……例の島、手入れが入ったんだな」

日本に帰国した《ガルム小鳥遊》は、スポーツ新聞の端に見つけた記事に、目をこらした。

「『某県・多良々島の違法カジノ摘発! 暴力団との関連も……』ねぇ。どうせ、おエライさんがたにはお咎めなしなんだろうが」

ふと、渡米以前、この話をした相手のことを思い出した。

「そういや、やっこさん……ここに行ったのか? ……まさかね」

あの女――JWI参戦時に知り合ったあのマスクウーマンは、そこまで無謀ではないであろう。

(……いや、分からんな)

ああ見えて、存外……格闘ジャンキーだったのかも知れぬ。

(《カンナ神威》……か)

いずれまた、手を合わせる機会もあるであろうか――





――北州 カムイ
――羽州 クサナギ
――長州 カツラギ
――豊州 イザヨイ
――肥州 タケガミ

(七氏のうち、五氏は既に、いくさ場に立てり)

(残りの二氏も立つか……あるいは……)

(……………………)

Secret
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遅くなりましたアクション04。兎に角えらいことになってます。自分でも驚くくらいに。多分メインストリ
プロフィール

アサギリ。

Author:アサギリ。
保科さんと奈良を愛するダメ人間。

ひとりごと。
本日の試合結果。



ぴくしぶ。
カウンター。
今の15曲。
SHOOT!/RO-KYU-BU!
カラフルダイアリー/寿美菜子
nexus/ClariS
オキドキ/SKE48
残念系隣人部★★☆(星二つ半)/友達つくり隊/三日月夜空(CV:井上麻里奈)、柏崎星奈(CV:伊藤かな恵)、 楠幸村(CV:山本希望)、志熊理科(CV:福圓美里)、羽瀬川小鳩(CV:花澤香 菜)、高山マリア(CV:井口裕香)
HIGH POWERED/sphere
おかえりなさい/坂本真綾
神様のいたずら/中島愛
Fly Away/富樫美鈴
水彩キャンディー/marble
Treasure!/著莪あやめ(CV:加藤英美里)
Unmei♪wa♪Endless!/放課後ティータイム
Singing!/放課後ティータイム
気まぐれ、じゃんけんポンっ!/ゆの (阿澄佳奈), 宮子 (水橋かおり), ヒロ (後藤邑子), 沙英 (新谷良子)
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